仙石寛子「背伸びして情熱」
(2009年7月30日 大幅に修正)
作者は、まんがホームで隔月で読み切りを描いてらっしゃる。透明感のあるタッチの絵(何故か鉱石のような輝きを感じたり…なんのこっちゃ)に、ちょいとシュールな作風を持ち味としている方で、その方の単行本をAmazonで購入する。
背伸びして情熱 (まんがタイムKRコミックス エールシリーズ)
- 作者: 仙石寛子
- 出版社/メーカー: 芳文社
- 発売日: 2009/04/07
- メディア: コミック
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作者自身は「近親相姦マンガ」と称しているが、雑誌の性格上そんなシーンは一切ない。後述する作者のサイトに「近親相姦のストーリーマンガ」だの「色っぽい話にならなかった。」ともコメントしているのもあるが、たしかに1話目(ちなみに、同人誌からのリライトである)に、二人はすでにそういう関係ともとれるセリフがあるし、姉も弟を「好きな人」とふっきれちゃっている。が、2話目に手しかつないでいないとエピソードを加えて、以降の苦悩の骨子となる「その先」に進めない理由がつらつらと描かれていて、1話で仄めかされた関係性は完全に覆されている(だから俺は1話だけが別の話に思えたのか)。むしろ、実の姉弟間の悲恋から純愛に文字通り純化していくストーリーと取ったほうがいいし、ストーリー自体も素晴らしいのだけど、どうしても作者の「近親相姦」という言葉がひっかかる…。もし、作者の当初の意図どおりこの姉弟が本当に近親相姦の関係で話が進んでいくとなれば、どのようなストーリー展開になっていたか…あくまで妄想レベルなんですが。絶対コミックエール!では出来ん内容やな(笑)。チャンピオンREDいちごあたりならいける(爆)?
俗っぽい話になったが、ストーリー全体は非常にピュアです。途中姉が同級生に告白されたり、その同級生に関係がばれたりして、心理描写にさらなるコクを生んだが、最後はいつか違う人を好きになる日が来ても、お互い好きでいよう(←ネタバレ)ってな感じで終わっている。これはある意味正しい終わり方だろう。ともすればヘヴィな作風になってしまうテーマにもかかわらず、カタルシスを徹底的に排除した姿勢は逆にいい意味での「裏切り」を覚えさせられ、心に刻み付けられた。
えぇい、くそ!これはマジで傑作だよ!多くの人に読んで欲しいよ。
作者のホームグラウンドだったコミックエール!(そういえば、俺この雑誌、三田で本を取り扱ってる店では見たことがない…)が休刊になってしまったので、今後はまんがホームでの隔月読み切り→毎月連載…てな感じになってほしいです(7月29日追記:本当にホームで毎月掲載になった)。
下が作者の仙石寛子氏のサイトである。オンライン漫画も非常に興味深い内容なので読んでみるのも一興。