まんがタイムラブリーのリニューアルから見る、テン年代の4コマのヴィジョンを勝手に考察。なんちて。Ver.3

2010年12月18日加筆修正。てにをは修正のつもりがどんどん加筆されて、Ver.3になってしまったw!しかし本質は変わっていない。
まんがタイムラブリーの大幅な刷新がアナウンスされて、4コマファンの間では喧々囂々だったし、俺も俺でついったーでモニョモニョつぶやいていたが、リニューアルの内容が判明したところ、こちらの予想をはるかに上回る事態になっていた!
以下、リニューアル前のまんがタイムラブリーを「旧ラブリー」、リニューアル後を「新ラブリー」とする。

  1. 連載陣は全て他のタイムグループ各誌へ移籍&打ち切り:いくつかの連載は移籍先が既にアナウンスされていたが(詳しくは出たとこBlogger参照。)、それ以外がほぼ打ち切りとは!十野七「放課後のピアニスト」が残留だと思っていたのがまんがタイムスペシャル(以下タイスペ)移籍で、これも残留もしくはタイスペ移籍だと思っていたいけだじゅん「ごめんね、委員長!」が終了、さらにタイスペあたりに移籍と思っていた古下えみ「視界良好」までも終了だったのに驚く。ところで、るうの「愛myファミリー」の尻切れトンボっぷりはいかがか?実はまんがタイムファミリーへ移籍ですー!とか…ないよな。
  2. ゲストの連載化もない:予告カットから察するに、学園モノやファンタジー系が多いから、小池定路ぐだぐだしている女子高生の放課後略してぐだじょ」は残留できると思っていたが…予告カットを見ると、OLものならびに働く女性ものは入り込む余地がなくなった感がある。その辺の身の振り方の考察は後述する。
  3. 結局、ゲストを含めた旧ラブリー執筆陣で、新ラブリーに残留できたのが内村かなめだけだった:しかも、作品は別になってしまっている。

とまぁ、実質「今月号をもって、まんがタイムラブリーは休刊しました。これからは新創刊する「まんがタイム○○」をよろしくおねがいします。」と言っても、遜色ないほどの大幅な刷新と相成った。
ここで、ふと思った。ここまでやるんだったら、「まんがタイムラブリー」の看板を捨ててもいいものをなんで拘ったのか?
4コマファンならご存知の通り、旧ラブリーは一時期、レディコミ寄りのストーリー漫画誌を目指したことがあった。しかしその路線がものの見事にコケた(具体的には、ストーリー漫画の打ち切りが相次いだ。)のを目の当たりにしている方も多いだろう。その結果、今年の上半期の旧ラブリーは、連載している作家の再録で水増しする非常に情けない事態に陥っていた。
その失敗から、俺は芳文社はレディコミ雑誌(あるいは「つぼみ」のような定期的に発売される書籍扱いのアンソロ…加筆時に思いついた)を出すべきだと思っていたし、いずれは創刊するものだと思っていた。
が、新ラブリーは「ストーリー4コマ誌」と銘打って、旧ラブリーが狙っていたストーリー性を重視した路線を誇示しつつ、芳文社のドル箱であるまんがタイムきらら読者と、それ以降に台頭してきたライトノベル愛読者や、現在のオタクや腐女子(…予告カットの中にBL要素を含んだ作品も見受けられたので。)向け雑誌の読者をターゲットに絞った(と思われる)雑誌作りに方向転換したのである。つまり、新規開拓路線だ!
はっきり言って、俺には執筆陣に関して、誰が誰だかほとんどわからない。わかるのは、HERO、玉置勉強内村かなめ、佐伯イチ、葛西りいち…こんだけだ。他の執筆陣は見聞きする限りで、スクエアエニックスが出しているガンガン誌周辺で執筆していた作家や、一迅社で執筆している作家(とのことだが、俺、まんがぱれっと系列を実は読んだことがない…)が中心で、4コマ経験が少ない作家も多いとの事。もしかしたら、まんがタイムきららフォワードのようなストーリ漫画オンリーの雑誌を創刊することも将来的に視野に入れているのかもしれない。
いずれにしろ、旧来のレディコミ寄りのファミリー系女性読者ときららからファミリー系に来たオタク読者とは食い合わせが悪かった…いやむしろ、共存は不可能であることを露呈したから、それまでのファミリー系やレディコミ路線を捨ててしまったのだろう。

以上のことを見て、テン年代の4コマ雑誌(特に芳文社あたり)のヴィジョンって、本当に勝手な考察なんだが、3つに分かれると思うんだ。

  1. さらなる新規開拓
  2. きららグループ誌で確保した読者の維持
  3. 旧来のファミリー系(特に女性層)の維持

(1)は、今回の新ラブリーがまさにそれ。もっとも、ファミリー系雑誌は今年に入ってから、植田まさしフォロワー(田中しょう松田まさおなど)や、主婦向け作家(鵜飼U子新田朋子など)といったベテラン勢をズバズバ切っているのだけど。
(2)は、まんがタイムきららが創刊されたのが2002年。4コマ雑誌を読む読者は20代以降がメイン(竹書房雑誌広告料金の欄参照)だから、きらら創刊時から知っている読者は、今30〜40代になっている。
つまり、オッサンになったオタクだ。もちろん、俺もドンピシャよw!だから、ファミリー系ではまんがタイムジャンボ(以下ジャンボ)やまんがホームが力を注いでいるが、さらにバリッバリのオッサン向け雑誌である週刊漫画TIMESでさえもそういう方向を模索している(板倉梓の読みきりがその最たる例だ。個人的に大井昌和が入っても違和感ないと思う)状況である。個人的には、タイスペがアーリーきらら読者向けの完成形ではないかと。主力作家がファミリー系をホームグラウンドにしつつ、きらら系雑誌への執筆経験を持っている作家(宮原るり藤島じゅん師走冬子などなど)か、きらら以前の「美少女系4コマ」を書いてきた人(胡桃ちの荻野眞弓)ばかりだ。
一時期きらら系で描いてる作家をファミリー系雑誌に投入した事もあったが、また再投入してもいいだろうし(現在は、秋★枝岬下部せすなだけか)、学園モノやファンタジーものは新ラブリーに委ねて、旧ラブリーで描かれていたOLや働く女性を主役にした漫画をきららに大量投入すれば、その資産を生かせるし、オッサンになったきらら読者にも受けるんじゃないかと思う。なんでこんなこと思ったのかというと、以下のついーとを見て。

まんがタイムラブリーが全面刷新。次の連載陣が一人も分からない。スペシャルとラブリーは、おじさんリーマンがOLに甘酸っぱい幻想を抱くためのバイブルだと思っていたけど、どうやら版元の思惑は違ったみたいだ。

(3)は、俺は実話系4コマもよく読んでいるのだけど、きらら系が台頭してファミリー系からはじき出された作家が、最近、実話系雑誌に多数執筆しているのだ。それまでもファミリー系と併行して書いている作家が多く(たかまつやよい美月李予たかの宗美吉田美紀子すみれいこ笹野ちはるなど)、このへんは「みこすり半劇場」にも執筆経験を持つので、実話系雑誌ではデフォルトのHネタや悪口、グロネタにも対応でき、看板作家を含めて安定した状況であった。が、そこに去年辺りから、実話系とはあまり縁のなさそうなファミリー系の中堅作家が「まる生」に投入され始めた。主だったところで、和田真由美久保田順子がそうである。当初は全く想像がつかない状態だったが、現在では両者共に「まる生」のレギュラーになっている。中には順応できなかったのか、1回限りで終わったゲストもいたが、彼女たちのように順応できた作家も生まれた。
それに乗じたのか、最近の「まる生」系列には、旧ラブリーやジャンボを切られた作家が大量投入され(テンヤ、かわぐちけい、藤城翔、奈々尾舞流など)、芳文社では実話系雑誌がどんどん創刊されている状況だ。投稿実話メイン&(実話系での)新人作家&旧来の作家の再録などでかなりごちゃごちゃしているが、整理されて他社の実話系漫画のように作者自身のエッセイやストーリー漫画が出てくるのではないかと思っている。そしてそこからポスト安斎かなえが出てくるのだろう。
とまぁ、長々とだべったが、お前は結局新ラブリー買うかって?とりあえず、「創刊号」は買うよ。それ以降は…
正直わがんねw
でも、きららで安定してもさらなる新規開拓に挑む芳文社の姿勢には敬服するし、それによる他雑誌の相乗効果には常に目を見張っていきたいと思っていると書いて、この稿をむすびとする。